相談業務から働き方改革を考える

以下、行政マネジメント研究所 コラム 2017年11月 より転載

 

 先日、ある福祉事業団のマネジメント層の方々を対象とした研修を行ってきました。
 研修は、ご要望を反映し、職場運営の方法や困難事の共有と解決策の策定を中心に進めましたが、途中、仕事の管理手法として、優先順位の決め方、進捗管理や仕組み作りの必要性等も織り込みました。その中で、ひとつひとつの仕事の工程を見える化し、求められる水準を最も早く実現できる工程に揃えることの重要性のお話もしました。そして、昼休み、終了時の質問時間に、この点についての疑問が呈されました。

 

 

【相談業務は管理できるのか、というご質問への私の回答】
 ご質問は、ともに相談業務は非定型的業務であり、被相談(応談)者の個人的スキルに依存するため、定型的業務を前提とする仕事の管理手法は妥当しないのではないか、という内容でした。
 相談業務は、確かに、相談者の相談内容や置かれている状況、被相談(応談)者の傾聴等のスキルに依存する部分が多く、業務時間を特定することは難しいかもしれません。また、聴くことによる不安・不満の解消自体が重要という相談業務の本質からも、一律に時間を決めることは難しいでしょう。
 しかし、果たして、そう簡単に割り切ってしまって良いでしょうか。
 相談業務も 把握すべき情報を聞き出す仕事、 不安・不満に寄り添い、負の感情を解消してもらう仕事に分けられるのではないでしょうか。
 そして、 把握すべき情報を聞き出す仕事については、フロー図の作成や聴きとる際のフォーマットを作成することで、ある程度は定型化・効率化すべきです。また、 不安・不満に寄り添い、負の感情を解消して頂く仕事について、個人のスキルに任せきりにしていないでしょうか。確かに、その人の性格や醸し出す雰囲気等、個人の資質に大きく依存する仕事であったとしても、それが自己満足に陥っていないか、より良い対応の仕方はないか、を職場で考え、共有することはすべきでしょう。「不安を感じている相談者には、こういう言葉がけや順番が良いようだ」、「なかなか決断できない方には、決断すべき事柄を紙に書いて見せておきながら、感情に応ずると良い」等、現場で身につけた各々の技術を共有する時間・場を作る必要があると思います。

 

【何のための効率化か】

 私の回答に、質問してくださった方々やその他の方々も、頷いてくださいました。確かに、個人の技量に任せていた部分が多くあり、スキルを共有する場の必要性をご理解いただいたからだろうと思います。
 しかし、帰りの新幹線の中で私が感じていたのは、自分の口から出た言葉への小さな違和感でした。それは、相談者の気持ちに寄り添うという福祉に従事する方々が大切にしている点を、技術(スキル)の面からのみ切り込み、回答した点にあったことにすぐ気が付きました。あたかも効率性という一つの価値に過ぎないものを、当然の実現すべき唯一の価値であるかのように解説してしまったことへの反省です。
 私は、回答の先に、「何のための効率化か」を問いかけるべきだったと考えています。何故なら、仕事は、仕事の成果をだすためだけにするものではないからです。
 それは、相談者の人生への心情的支援であったり、組織への貢献であったり、自己の能力の確認であったり、後輩や部下への教育であったり、課題への挑戦や自己が成長する過程そのものでもあります。
 管理法に基づく効率性の追求が仕事の本質であったなら、それは無味乾燥な作業と何も変わりません。先のご質問を受けた際に、この点をともに考える必要がありました。
 その時間をとることで、仕事の管理は、時間捻出による他の価値を実現する手段として位置づけられることとなったはずです。そして、その時間は、仕事を管理すること自体を目的化することを避け、仕事の多様な意義をもう一度確認することに繋がったのではないでしょうか。

 

【働き方改革≠時間短縮】
 働き方改革が実現すべき課題として設定される現在、タイムマネジメントや業務改善の必要性が叫ばれ、事実、そのようなご依頼を多く受けています。
 しかし、私たちの仕事は、効率性だけを唯一の価値としている訳ではありません。効率性やこれを含む実効性を高めながら、仕事を通じて得ようとする多様な価値の実現を如何に図るか、ともに考える必要があります。
 働き方改革の真の意味を、働く現場で、それぞれの価値観に照らし合わせて考えることを忘れてはならない、と再度肝に銘じるこの頃です。

以上

 


人材・組織開発コンサルタント

後閑徹


ワーク・ライフ・バランス(働き方改革)に取り組む際に理解していただきたいこと

 行政マネジメント研究所 2017年 5月コラムより転載

 

 

【はじめに】
 今年3月、内閣府より「男性の働き方改革・意識改革に向けた職場のワーク・ライフ・バランス推進のための取組事例集」が発表されました。ヒアリング調査対象は、以下の3つの点から選定された企業です。

従業員の働き方改革、ワーク・ライフ・バランス推進のために実施した取組の結果、
  男性従業員に生じた変化として、以下を選択している企業
  (顱飽藥・家事への参画
  (髻肪楼莖萋阿悗了臆
  (鵝鵬雜遒悗了臆
  (堯砲修梁召妊罐法璽な回答のある企業
従業員の働き方改革、ワーク・ライフ・バランス推進のために実施した取組の結果、
  男性従業員に生じた変化として、「ライフの充実を通じた業務へのフィードバック」を
  選択している事例
導入経緯に「本業へのプラスのフィードバック」を挙げている事例のうち、
  取組の結果、男性従業員に何らかのポジティブな変化が生じていると回答している事例

  参考URL : http://wwwa.cao.go.jp/wlb/research.html(内閣府ホームページ)

 

 

 

 お伺いする地方自治体でも、ワーク・ライフ・バランスの実現や、いわゆる「ゆう活」に取り組まれているとお聞きすることが多くなり、研修のご依頼も増加しています。紹介されている取組の中には、バディー制(複数担当制)、多能工化、時間外労働の見える化、時間がかかる業務プロセスを見直す場の設定、電話・メールの最終時刻の徹底等、地方自治体組織でも参考に出来る「仕組み」が多々あるように考えます。

 

 

【ワーク・ライフ・バランスの実現は、役割葛藤の解消を組織(職場)が担うこと】
 私たちは、人生においていくつかの役割を担い、年代とともに変化させています。下図は、米国のキャリア開発・教育学者・D・スーパーのライフ・キャリア・レインボーです。

 

 D・スーパーは、成長期(0〜15歳)、探索期(16〜25歳)、確立期(26〜45歳)、維持期(46〜65歳)、下降期(66歳〜)というライフステージにおいて、〇劼匹癲↓学生、M床砲魍擇靴狄諭↓せ毀院住民、タΧ反諭↓η朸者、Р板躾佑箸いμ魍笋箸修良を変えていく、としています。仕事に比重をおく時期もあれば、子育て期の家庭人のように生活に比重をおく時期もあります。介後の担い手として、年を経てから再度子どもの役割を果たす人もいます。  多くの役割を担うとき、育児(家庭人)・介護(子ども)と仕事(職業人)のように、互いに両立できない2以上の役割に悩む状態を役割葛藤といいます。 そして、役割の葛藤の解消を二者択一的に考え、判断を本人(個人)に任せてきたのが、これまでの社会・組織でした。昨今のワーク・ライフ・バランスの取組は、役割葛藤の解消を、個人の問題にせず、組織(職場)として取り組むべき問題へと移行させた点に大きな意義があります。

 

【ワーク・ライフ・バランスに関する批判的声に応えて】
 働く女性の問題に関わり、多くのインタビュー調査をしてきた私は、「活躍するか否かは個人の自由の問題だ」「ワークをとる生き方があっても良い」という批判的な声をよく聞きます。確かに、どのような働き方をするかは個人の自由であり、自己決定が尊重されるべきでしょう。私も同意します。 しかし、選択をするには、前提として選択可能性が必要です。働き方に対する個人の選択の余地が無い状態において、個人の選択の自由をいうのは背理ではないでしょうか。個人の選択をいうなら、まずは選択可能性を広げなければならないはずです。現在のワーク・ライフ・バランス政策は、仕事か生活かのどちらかしか選択できなかった状態に、仕事をしながら生活を充実させるという道をひらこうとするものです。働き方は個人の自由の問題である、という正論は、このような選択の余地を広げた後に実現するものではないでしょうか。

 

【最後に】
 女性活躍推進が政策として本格的に動き出す前、ある専業主婦の方にインタビューさせて頂いたことがあります。自分の能力をもって人に貢献する仕事に意義を認めていた彼女は、出産を機にワーク・ライフ・バランスの困難を見極め、仕事を辞めました。彼女が言った、「もう滅私奉公するような働き方をする時期は終わりました」という言葉が強く印象に残っています。仕事か生活かの二者択一を迫るのではなく、仕事と生活の調整を図る仕組み・機能が、現在の組織(職場)には求められています。

 

以上

人材・組織開発コンサルタント 後閑徹

 

 


働き方改革(女性活躍)プロジェクト始動

いよいよ上場予定の民間企業における働き方改革(女性活躍)プロジェクトが始動しました。

 

社長の指示により、先行してプロジェクトメンバーのヒアリングを2回実施、見通しを立ててのスタートです。

プレゼンの際、3常務のうちのおひと方から、報告書を見て、「これは1・2項目を除けば、男性の働き方改革にもつながるのでは」とのお言葉を頂きました。

 

まさにその通りです。

 

私が企画書の段階から申し上げてきたのが、以下の2つ。

 

―性が活躍する企業が業績を上げるのではなく、女性が活躍できる環境を有する企業が業績を上げる

働き方改革・ワークライフバランス・女性活躍は連動して機能する

 

―性活躍推進が今ほどフューチャーされていなかった頃に、データを元に厚労省が出していた分析です。

△砲弔い討蓮∈でも3者の関係を理解している方は、そう多くないように思います。先日、今年2回目となった関西の某政令市における全管理職向け講演会で説明した後、「初めてこの3者の関係が明確になった」という感想を多く頂き、逆に驚きました。

 

 

BLOGOSに掲載された記事「男性と違う何かをする必要はない」で書いた4象限 を用い、ヒアリングした女性メンバーが考えている内容の分布と、プロジェクトで私たちがめざすべき象限を明示し、ボードメンバーのご理解を頂きました。

 

さぁ、いよいよ来週火曜日が最初のセッションです。選抜された16名とともに、組織開発の手法を用いたり、研修をさせていただいたりしながら、短期成果のための具体的施策と将来を見据えた人事評価制度や福利厚生の見直しへの提案を模索していきます。

 

これまでもコンサルティングをした組織の「仕組み」つくりの観点や、マネジメント要素、経営の観点も入れながら、全力で取り組みます。組織とそこで働く人々の幸せの接点を見つけることが、コンサルタントとしての私の役割と考えています。

 

組織開発・人材開発コンサルタント:研修講師 後閑徹


OJTマニュアル / 桜の記憶

書き仕事が詰まっています。

 

昨日、朝5時までかかって、依頼されていたOJT(職場内研修)マニュアルのたたき台を完成させました(厳密には、5時に諦め、3時間眠って11:00amに完成させました)。来週の木・金は札幌に出向き、マニュアル作成チームとともに2日間かけて内容をブラッシュアップ、その後、イラストレーターに依頼し、4月中に納品となります。月火は長崎で仕事なので、南から北へと、桜前線を追い越して日本列島を縦断します。

 

今回依頼を受けたのは、この10年で構成員が10歳以上若返ったという組織でした。アンケートやその他の調査を反映させ、育成方針をどのように具体化するのか、イメージしながら作成しました。

 

通常、OJTは、職場における業務知識の習得を目的とするものです。

しかし、よくある「知識・技術の承継」だけで良いのか。団塊の世代とそれに続く層の大量退職のため、現在の管理職層はかなりお若いというデータが気になりました。きっと、これは多くの企業でも起きている問題です。

 

大きな組織が機能不全になる原因は様々ですが、組織文化・風土はなかなか手を付けづらい部分です。OJTは人材育成の一環である以上、新しい人材を育て、職場に影響を与え、組織を変える手段になるはず。前例を検証し、澱のように溜まった旧弊を打破してもらいたい。

 

そんな思いもあり、OJTマニュアル作成においては、「新たな知の創造」「新たな組織(職場)文化の創造」を目的のひとつに入れました。意識調査アンケートで「急激な時代の変化を取り込む必要」のポイントが大変高かった点をどうにか反映させたい思いもありました。

 

札幌では、優秀な3名のコンサルタントの方たちと共に、たたき台のワード文書を映写しながら、その一字一句を詰めていくことになると思います。そんな時間も楽しみにしています。もちろん、夜の楽しく、美味しい宴会も。

 

     

 

朝からの雨模様が嘘のように晴れ渡った今日の午後、近くの図書館に犬の散歩を兼ねて桜を見に行きました。

桜は咲いて空を染め、散って地を染める。一週間後、またこの場所を訪れたら、きっと地面は桜色に染まっていることでしょう。

 

1歳のパピヨンに桜はどう見えているのでしょう。空気に漂う桜の香りを覚えているでしょうか。来年連れてきたら、彼女はこの桜を記憶のどこかから引っ張り出してきてくれるのでしょうか。


私も、OJTマニュアルを作成するために徹夜したことをいつかずっと先に、桜の花と共に思い出す日が来るかもしれません。

 

そんなことを考えながら、夕刻の散歩を楽しみました。

 

 

人材・組織開発コンサルタント・研修講師 後閑徹

 

 

 

 

 


「働き方改革は個人の能力の問題ではなく、組織の問題だ」から始めよう 

 

「そんなことしても、他の日の労働時間が増えるだけのこと」「仕事量が変わらないのにどうすればいいのか」

 

蠑床偲鉄錙文宗Ε僖淵愁縫奪)が、1960年(昭和35年)に、「5年後に週休2日制を導入する」と宣言した時の声です。働き方改革に取り組む現在と同じ声が、既に今から50年以上前に、あちらこちらで発せられていたようです。

 

海外視察通じて、国際競争に打ち勝つためには能率を高める必要があることを痛感した松下幸之助氏が、「1日休養、1日教養」をスローガンに断行した週休2日制は、当時、欧州でさえ一般的ではありませんでした。しかし、この取り組みはその後広がり、他の民間企業は1980年(昭和55年)頃、官公庁は1992年(平成4年)に完全週休2日制に移行します。

 

当時、松下幸之助氏は、「10分の電話を3分にする等の努力をして取り組む必要がある」という言葉を残しています。今の言葉でいえば、「業務を抜本的に見直し、改善することを通じた働き方改革を実施する必要がある」、となるでしょうか。

 

今年1月、蠧本電産の永守会長兼社長が、最新のロボットの導入やAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)の利用により「2020年までに売上倍増(2兆円)・残業ゼロ」を目標に掲げ、世間を驚かせました。

 

松下幸之助氏と同様に、ビジネスの拡大とともに無駄を排除し、働き方改革を推進しようという考え方です。人間では不可能な改善余地の洗い出しをAIを使用して行うビジネスも始まり(日立製作所その他)、最早、働き方改革・時間外労働削減のために業務改善の必要性を否定する者はいないでしょう。

 

【本当に業務改善が時間外労働対策の主戦場なのか】

継続的な業務改善の必要性は認めるとして、現在の時間外労働の削減の主戦場は果たして、業務改善となるのでしょうか。

 

昨年に発表された「平成28年版 過労死等防止対策白書」に「所定外労働が必要となる理由」が掲載されています。厚生労働省による民間企業を対象にしたこの調査では、時間外労働の原因を企業側と労働者側の2者の観点から調査しています。それぞれの立場からの理由の上位3項目は下表の通りです。

 

〈所定外労働が必要となる理由〉

 

企業側の理由

労働者側の理由

1位

顧客からの不規則な要望に対応する必要があるため(44.5㌽)

人手が足りないため(仕事量が多いため)(41.3㌽)

2位

業務量が多いため(43.3㌽)

予定外の仕事が突発的に発生するため(32.2㌽)

3位

仕事の繁閑の差が大きいため

(39.6㌽)

業務の繁閑が激しいため 

 (30.6㌽)

※「平成28年過労死等防止対策白書」第2−7・2−8図を元に筆者作成      

参考URLhttp://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/16/dl/16-1-2.pdf

 

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【組織の問題を個人の能力の問題にすり替えていないか】

興味深いのは、企業側の理由です。そこには、労働者側の理由に上がっていない、「スケジュール管理のスキルが低いため」、「マネジメントスキルが低いため」、「労働生産性が低いため」という理由がありますが、それぞれ6.3ポイント、4.9ポイント、4.4ポイント、と極めて低い数値となっています。すなわち、企業側としても、仕事の進め方や管理の仕方の問題を時間外労働の主たる原因とは考えていないのです。

 

企業の場合、最早、「10分の電話を3分にする」ことが主戦場ではないのです。

 

時間外労働の理由として上位に挙がっている、「業務量が多いため」「人員が不足しているため」「仕事の繁閑期の差が大きいため」「顧客からの不規則な要求に対応する必要があるため」は、それぞれの組織において、管理監督者層が取り組むべき組織上の問題に他なりません。研修やコンサルティングの際によく話すことですが、「組織は、組織の問題を個人の能力の問題にすり替える」傾向があります。

 

果たして、時間外労働の旗振り役を担っている部署では、その真の原因を、分析してみたことはあるでしょうか。安易に「業務改善をすれば、時間外労働の削減が成る」「残業抑制は個人の努力の問題である」と捉えてはいないでしょうか。もし、そうであれば、これは、まさに「組織の問題を個人の問題にすり替えている」以外の何物でもないように思います。

「働き方改革は個人の能力の問題ではなく、組織の問題である」をスタートにしないと抜本的対策にはならないはずです。

 

人材・組織開発コンサルタント・研修講師 後閑徹

 

 


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